藤田宜永
+--May 03, 2008--+
「堕ちたイカロス」藤田宜永

「堕ちたイカロス」読了。
藤田宜永のモダン東京 的矢探偵シリーズの4冊目にしてシリーズ最終作。飛行機を製作する会社の競争が元になった事件に、飛行士の夢がからんで、、、という昭和初期を舞台としたミステリです。
今、上の文章書くときに気がついたのですが、作品中に"パイロット"という文字は1回も出てきませんでした。いつから飛行機の操縦士のことを一般的に"パイロット"と呼ぶようになったんでしょうね。西洋の技術水準に追いつこうとしていたこの時期、何に漢字をあてて何にカタカナをあてたかというのを調べたら面白そう。探せばそういうのを研究した本があるかな。
それに、ミステリという娯楽を通して昔の東京や社会を見ることで、今の東京や社会を相対的に見られるのも面白い。今の東京って、新しいけど中身は目新しくもないビルがいくつも建って、もう要らないよと思うのですが、東京がそんなことしているのって今に始まったことじゃないんですよね(苦笑)。
また、小説のメインストーリーを占めているわけではないのですが、軍が少しずつ存在感を増している様子も、さらっと書いているからこそ変にリアルに感じてしまいます。こうやって徐々にその時代の雰囲気が変わっていったんだろうなって。今の時代も、それ自体はちょっとした変化であるものを、たいしたことないと見過ごしてはいけないのでしょう。
それにしても、これが4作で終わってしまっているのは惜しい!昔の東京を舞台にしたミステリというのは、いろいろな角度で読めて面白いです。藤田宜永にこだわらなければまだいろいろあるかな。
+--April 30, 2008--+
「哀しき偶然」藤田宜永

「哀しき偶然」読了。
藤田宜永の的矢探偵シリーズ。一匹狼の的矢探偵が、今回は子供達を引き取って面倒見ちゃったりするのが微笑ましいです。まあ、案の定、子供達はすぐに身の落ち着き先が決まるのですが、うち一人はこの先もよき助手となりそうな予感。
事件の方は、今回はなかなか複雑。先まで読み進まないと全貌が見えません。いや、それ以前に、どの謎を解いたら終わりというゴールが見えずに走っている感じ。結末も、推理を重ねて謎を解いたというより、タイトル通り偶然が重なって謎が解けたという感じですね。
それよりこのシリーズは、昭和ひとケタの時代の東京を楽しむのがいいのです。今回の話は、1932年11月という、東京市が36区になった直後という設定。白木屋でお買い物もしていますが、白木屋はこの年の12月に火事になってしまいます。
一方で犬養毅が殺害されたり、物々しい年でもあったんですよね、1932年は。小説の事件も、不況をしのぐために土建屋が賄賂を贈ったりなんだりと、きな臭い事件です。でも、そこに一途な恋愛も絡んできて、、とあまり詳しく書いちゃうとネタばれになっちゃうな。
+--March 21, 2008--+
「美しき屍」藤田宜永

「美しき屍」読了。藤田宜永が昭和初期の東京を舞台に書いた探偵小説の第二弾です。
このシリーズ、何と言っても著者がこの舞台を楽しんでいるのがいいです。もちろん実際には、当時の東京を再現するのに調べものなどなどすごく緻密にしたのでしょうが、それを『こんなに調べたんだ』とアピールしすぎず、さらりと書いているのがいい。
読んだタイミングも、確定申告という義務を果たした後だったので、解放感いっぱいにエンターテイメントを楽しみました。クールな的矢探偵も、そんなときに読むといつもの倍くらい格好良くみえます(笑)。
+--February 04, 2008--+
「蒼ざめた街」藤田宜永

蒼ざめた街読了。
軽く楽しく読める、昭和初期の探偵もの。巻末の参考資料を見ても、当時の東京を書くために綿密に調べているはずなのに、それをさらっと書いているところがいいですね。こういう作品で『自分がいかにきちんと調べたか』を主張されちゃうと興ざめしちゃいますけど、主人公がそうであるように作者自身も昭和初期の東京を楽しみながらも深入りはしない。
この頃は車も少なくて、ドライブも今より楽しかったかも。新宿・池袋から本所まで主人公がシトロエンで走り回っています。でも、車での尾行は今よりも目立ったかもね。







